この合併延期の背景には金融庁の強い圧力があった。
舞台裏では直前まで10月1日の合併に執着した銀行と金融庁の激しい駆け引きが繰り広げられた。
「システム統合までのスケジュールを白紙から見直すべきではないか。
8月8日までに銀行法に基づき再報告せよ」05年7月26日。
金融庁から届いた、 TM 銀 行と U 銀行のコンピューターシステムの統合について再度の報告を求める文書を手にした両行首脳陣は目を疑った。
05年6月に数回にわたりオンラインを停止してテストをしたが、特に不具合は見つからなかった。
8月20、21両日に最終テストを実施したうえで10月1日の銀行合併の可否を判断する計画をつくり、銀行側は「計画に問題なし」と自信満々だったからだ。
これに対し、金融庁は「統合の際に万が一、不測の事態が起きた時に速やかに回復できるかの検証が不十分ではないか」と懸念した。
システム統合の際に大規模な障害が起きた2002年の M 銀行の二の舞は絶対避けるべきだ。
小切手社会の米国と違い、口座決済が主体の日本ではシステムははるかに重要。
それなのに本当に準備が不十分.テストの回数を増やして万全を期せ、決して合併時期を延期せよ」とは書いていない。
ただ、金融庁の強い思いが透けて見える文書に銀行側は「合併を延期しろということか」と身構えた。
05年7月28日。
「金融庁が銀行合併延期を事実上要請、両行は延期する方向で検討に入った」との一部報道に、 TM 会長の M は「そんな検討はしていない」と烈火のごとく怒った。
頭取の H を筆頭に TM 首脳陣からは「まだ10月合併をあきらめるべきではない」との反応が出た。
両行関係者は「合併時期を延期するほどの問題はない」と楽観していた面もある。
特にシステム統合を主導した TM の側に「問題がないのに合併を延期するのはおかしい」という強硬論が充満していた。
だが10月1日の合併はもう無理」と U 首脳陣の反応は全く逆だった。
04年、検査忌避をめぐって金融庁と鋭く対立、元役員の逮捕者を出した U にとっては、当局に抵抗する無力感が体に染みついていた。
金融庁が「システム統合計画の再報告の中身が不十分ならば、銀行合併の予備認可を与えない」との立場を明確にしている以上、追加テストの実施は不可避だが、10月1日までに日程のゆとりは残されていなかった。
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